【第3回】インボイス制度開始後の消費税の計算
インボイスとは?

インボイス制度とは消費税の仕入税額控除の方式のひとつで課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみを控除することができる制度のことです。
インボイスとは適格請求書ともいい、売り手が買い手に対して一定の事項が記載された請求書や納品書及びこれらに類する書類のことをいいます。請求書や領収書、納品書、レシートなど、その名称を問わず、必要事項が記載されたものであればインボイスに該当し、様式は定められていません。
売り手が買い手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです
導入は2023年(令和5年)10月1日ですので、今のうちから準備を行いましょう。
第3回目となる今回は適格請求書(インボイス)の消費税額の端数処理や消費税額の計算方法とその注意点について最大級の利用者数を誇る業務改善システムをつくる株式会社エスエムエスが詳しく解説しています。
1.適格請求書の消費税額等の端数処理
インボイス制度開始後の消費税の計算
適格請求書保存方式における税額計算は、現行の区分記載請求書等保存方式と同様にすべての売上および仕入について税率の異なるごとに区分し、税額計算を行うことになります。
適格請求書の記載事項である「税率毎に区分した消費税額等」に1円未満の端数が生じる場合には、一つの適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理(切り上げ、四捨五入、切り捨てなどの任意の方法)を行います。
従って、「税率ごとに区分して合計した対価の額」に税率を乗じるなどして計算することになりますので、一つの適格請求書に記載されている個々の商品ごとに消費税額等を計算し、1円未満の端数処理を行い、その合計額を消費税額等として記載することはできません。
「A商品は切捨て、B商品は四捨五入、C商品は切り上げ」のように品目ごとの端数処理はできません。適格請求書ごとに一つの端数処理を行いましょう。
また、「税率ごとに区分して合計した金額に対して税率を乗じる」ことになるので、個々の商品ごとに消費税額を計算し、その計算した消費税率ごとに合計するという記載は適格請求書では認められません。
先に「税率ごとに合計」、その後から「消費税額の計算」の手順を守りましょう。
2.売上にかかる消費税額の計算方法
原則的には割り戻し計算、特例で積上げ計算、これら2つの併用の計3つの方法があります。
割り戻し計算(原則)
課税売上にかかる消費税額は、原則として割り戻し計算によって算出します。 税率ごとに区分した課税期間中の課税資産の譲渡などの税込み価格の合計額に108分の100または110分の100を乗じて税率毎の課税標準額を算出し、それぞれの税率(6.24%または7.8%)を乗じて課税売上にかかる消費税額を算出します。
(ア) | 軽減税率適用分の課税売上にかかる消費税額 = 軽減税率適用の課税売上の税込み価格の合計額 × 100/108 × 6.24/100 |
(イ) | 標準税率適用分の課税売上にかかる消費税額 = 標準税率適用の課税売上の税込み価格の合計額 × 100/110 × 7.8/100 |
(ウ) | 課税売上にかかる消費税額 = (ア) + (イ) |
積上げ計算(特例)
課税売上にかかる消費税額は、原則として割り戻し計算によって算出します。 税率ごとに区分した課税期間中の課税資産の譲渡などの税込み価格の合計額に108分の100または110分の100を乗じて税率毎の課税標準額を算出し、それぞれの税率(6.24%または7.8%)を乗じて課税売上にかかる消費税額を算出します。
課税売上にかかる消費税額 = 適格請求書などに記載した消費税額等の合計額 × 78/100
割り戻し計算と積上げ計算の併用
課税売上にかかる消費税額の計算は、取引先ごとに割り戻し計算と積上げ計算を分けて適用するなど併用することができます。
3.仕入にかかる消費税額の計算方法
原則的には積上げ計算、特例で割り戻し計算、これら2つの併用の計3つの方法があります。
積上げ計算(原則)
課税売上にかかる消費税額は、原則として割り戻し計算によって算出します。 税率ごとに区分した課税期間中の課税資産の譲渡などの税込み価格の合計額に108分の100または110分の100を乗じて税率毎の課税標準額を算出し、それぞれの税率(6.24%または7.8%)を乗じて課税売上にかかる消費税額を算出します。
● | 請求書等積上げ計算 交付を受けた適格請求書などに記載された消費税額などのうち課税仕入れなどにかかる部分の金額の合計額に、100分の78を乗じて算出する方法です。 課税仕入れにかかる消費税額 = 適格請求書などに記載した消費税額などの合計額 × 78/100 |
● | 帳簿積上げ計算 課税仕入れの都度、課税仕入れにかかる支払対価の額に100分の10(軽減税率の対象となる場合には108分の8)を乗じて算出した金額(1円未満の端数につき切捨てまたは四捨五入)を仮払消費税額などとして帳簿に計上している場合に、その金額の合計額に100分の78を乗じて算出する方法です。 課税仕入れにかかる消費税額 = 帳簿に記載した仮払消費税額などの合計額 × 78/100 |
割り戻し計算(特例)
税率の異なるごとに区分した課税仕入れにかかる支払対価の額の合計額に、110分の7.8(軽減税率の対象となる場合には108分の6.24)を乗じて算出した金額の合計額を、課税仕入れにかかる消費税額とすることができます。ただし、この特例により課税仕入れにかかる消費税額を計算することができるのは、課税売上にかかる消費税額を原則の割戻し計算で行っている場合に限られます。
(ア) | 軽減税率適用分の課税仕入れにかかる消費税額 = 軽減税率適用の課税仕入れの税込み価格の合計額 × 6.24/108 |
(イ) | 標準税率適用分の課税仕入れにかかる消費税額 = 標準税率適用の課税仕入れの税込み価格の合計額 × 7.8/110 |
(ウ) | 課税仕入れにかかる消費税額 = (ア) + (イ) |
積上げ計算と割り戻し計算の併用
課税仕入れにかかる消費税額の計算は、請求書等積上げ計算と帳簿等積上げ計算は併用することができますが、これらの方法と割り戻し計算を併用することはできません。
4.どの方法で計算するか
原則として事業者がどの方法で計算するかは任意に決めることができますが、適用できない計算方法の組み合わせがあります。
売上にかかる消費税額の計算方法が割り戻し計算(原則)の場合
仕入にかかる消費税額の計算方法 | 適用の可否 |
---|---|
請求書等積上げ計算 | 適用可 |
帳簿等積上げ計算 | 適用可 |
割り戻し計算 | 適用可 |
売上にかかる消費税額の計算方法が積上げ計算(特例)の場合
仕入にかかる消費税額の計算方法 | 適用の可否 |
---|---|
請求書等積上げ計算 | 適用可 |
帳簿等積上げ計算 | 適用可 |
割り戻し計算 | 適用不可 |
割り戻し計算と積上げ計算を併用する場合
仕入にかかる消費税額の計算方法 | 適用の可否 |
---|---|
請求書等積上げ計算 | 適用可 |
帳簿等積上げ計算 | 適用可 |
割り戻し計算 | 適用不可 |
5.インボイス制度導入における消費税額の計算方法の注意点
インボイス制度の導入で事業者の事務負担は確実に増加します。 自社の事務処理能力と納税額への影響とを比較検討しましょう。
例えば少額の取引を数多く行う小売業などの業種は、売り上げにかかる消費税額の計算を割り戻し計算で行うのか、積上げ計算で行うのかによって納税額に多大な影響が生じます。自社の事務負担の増加およびそれに伴うコスト増加を考慮して、有利且つ対応可能な方法を採用するのがいいでしょう。
また、一定の条件(基準期間における課税売上高が5000万円以下など)を満たす事業者は簡易課税制度の適用を考えても良いでしょう。 簡易課税制度では課税売上にかかる消費税額に一定の割合を乗じて仕入控除税額を計算することになる為、仕入税控除の条件であるインボイスの保存や積上げ・割り戻しの計算は必要ありません。ただし、事業者の納税額に有利・不利がありますので慎重な検討が必要です。
6.よくある質問
インボイス制度に対応した請求書発行ソフトはありますか?
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インボイス制度の開始後、請求書を保存するスペースと手間が不便です
売り手は発行した適格請求書の控えを自社で保存する義務があります。
また、買い手側は受領した適格請求書と帳簿の保存が義務付けられています。
適格請求書は書面での交付に代えて電子インボイスでの対応が可能です。
産廃キングから請求書データをPDFとして出力できますので、楽楽明細にアップロードすることで電子請求書に対応できます。

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