産業廃棄物の処理
産業廃棄物の処理とは
廃棄物の処理とひとことで言ってもその「処理」のことを詳しく理解していますか?
家庭ごみといわれる一般廃棄物は、ゴミを集積所へ持っていけば、各自治体から委託された業者さんがゴミを回収してくれます。
しかし、事業活動に伴って排出された産業廃棄物はそのようにはいきません。廃棄物処理法に従い適正に「処理」することが義務付けられています。
廃棄物処理法における「処理」とは、発生した廃棄物の「分別・保管」から、「収集・運搬」、「積替・保管」、「中間処理」を経て「再生化」もしくは、「最終処分」されるまでのすべてのステップを「処理」と言います。
処理業者へ委託した時から処理が始まるのではありません。廃棄物処理法に規定されているとおり排出事業者が発生した廃棄物を分別もしくは保管する際にはじまっています。
(廃棄物処理法第1条)
特に排出事業者には遵守しなくてはならない責務もありますので、適切な「処理」を心掛けなくてはなりません。
「処理」とは、ごみを出した排出事業者の「分別」や「保管」からはじまっているんですね
このページでは最大級の利用者数を誇る業務改善システムをつくる株式会社エスエムエスが産業廃棄物処理業者とはどのようなお仕事をしているのか、処理の工程と基本や責務と行政処分までをわかりやすく解説しています。
まずはソフト診断!(45秒)
1.処理業者の区分
産業廃棄物処理業、及び特別管理産業廃棄物処理業には、大きく分けて「収集運搬業」と「処分業」に分かれています。
さらに、「処分業」には「中間処理業」と「最終処分業」に分類されています。
2.収集運搬業に使われる車両など
排出事業者が自ら収集・運搬を行う場合に必要な許可はありませんが、他の業者から委託を受けて収集・運搬を行う場合は、専用の許可を得なければなりません。また、これらの許可は、主に都道府県が担当しており、例えば荷積みと荷卸しの場所が都道府県をまたぐ場合、それぞれの都道府県から許可を得る必要があります。
ここでは積み込みから運搬に特化したはたらくくるまを紹介します。
バキュームカー
液状廃棄物の運搬に使われ、廃棄物を吸い込む装置がついています。
タンクローリー
タンクの内部仕切りがあって、数種類の液状廃棄物を同時に運べます。
汚泥吸排車
回収した汚泥を排出しやすいように、ダンプ構造になっているバキュームカーです。
清掃ダンプ
比重の軽い廃棄物を飛散することなく、効率よく運ぶために、荷台容量を大きくした車です。
パッカー車
廃棄物を荷箱に押し込むための機械装置が付いている車です。家庭ごみの回収でもなじみ深いですね。
脱着装置付きコンテナ車
機械で、荷台(コンテナ)部分を脱着することができ、荷台を廃棄物の排出現場に置いておくことによって、車両の回転効率化をはかることができます。
正式名称は「脱着ボディーシステム車」ですが、新明和工業が製造販売する車両の商標である「アームロール車」という呼称の方が馴染み深いかもしれません。
3.中間処理の施設
産業廃棄物の最終処分を行うために、分別を行ったり、粉砕による軽量化を行ったり、脱水・焼却・中和等を行うことを、総称して「中間処理」と呼びます。廃棄物そのものの量を減らしたり、再利用可能な視点にしたりすることができるため、産業廃棄物の処理の中でも特に大切なステップと言えるでしょう。
焼却施設
廃棄物を焼くための焼却炉を備えた施設です。焼却炉には、煙によって大気を汚さない為の排ガス処理装備をつけてあります。
廃酸・廃アルカリの中和施設
強い廃酸や廃アルカリは中和し、無害化してから放流します。また、有害金属などを含む廃酸を中和することで、有害金属などを沈殿物として回収することができます。中和槽にはプロペラ撹拌機がついています。
破砕施設
選別された廃棄物をリサイクルするために、品目別に破砕機により破砕したり、出荷時にハンドリングしやすいように、プレス機で圧縮したりします。
汚泥の脱水施設
大量の水を含んだ汚泥は、そのまま埋立することができないので、遠心脱水機(洗濯機の脱水機と同様の原理)や、真空脱水機(汚泥の水分だけを吸い取る)や加圧脱水機(汚泥から水分を搾り取る)などの装置で脱水を行います。
油の再生施設
水と油の混合廃液から油だけを分離したり、汚れた油を蒸留したり、ろ過して再生油を得る施設です。
ゴミをリサイクルしたり、そのものの量を減らす技術力の結晶ですね
4.最終処分場
破砕や焼却、リサイクル可能なものの選別などの中間処理を終えた産業廃棄物は最終処分場へ持ち込まれます。この最終処分場には3つの形態があります。
それぞれの最終処分場には廃棄物処理法によって、処分できる産業廃棄物や処分場の構造基準・維持管理基準が定められています。
安定型最終処分場
安定型最終処分場では、有害物質や有機物が含まれず、雨水にさらされても性状が変化しない廃棄物、いわゆる安定5品目、及びこれらに準ずるものとして環境大臣が指定したもの(石綿溶融物)を埋め立てることができます。
【安定5品目】 | ||
① | 廃プラスチック類 | |
② | ゴムくず | |
③ | 金属くず | |
④ | ガラスくず、コンクリートくず、陶磁器くず | |
⑤ | がれき類(コンクリート、アスファルト、レンガ、スレートなどの破片) |
維持管理基準として、安定型産業廃棄物以外の廃棄物の混入防止を目的として廃棄物の展開検査や、定期的な浸透水の水質検査が義務図けられています。
管理型最終処分場
管理型最終処分場では、環境省令で定める判定基準に適合する燃え殻や汚泥、または腐敗性があり地下水を汚染するおそれのある産業廃棄物を埋め立てることができます。処分場で発生した汚濁物質を含む保有水等を集排水管で集水し、浸出水処理設備で処理した後に放流します。 処分できる産業廃棄物の例としては、紙くず、木くず、汚泥、燃え殻、ばいじん、繊維くず、廃石綿、鉱さい、動物の死体、動植物残さなどです。
維持管理基準として、発生するガスの対策と管理や、浸出水処理施設で浄化する放流水の水質基準が義務付けられています。
遮断型最終処分場
遮断型最終処分場では、環境省令で定める判定基準に適合しない、通常の方法では無害化することが困難な有害物質の含まれる廃棄物を埋め立てることができます。自然から隔離し、処分場内へ雨水が入らないように鉄筋コンクリート製の頑丈な建造物で、上部には屋根を設けられています。 処分できる産業廃棄物の例としては、有害な燃え殻や汚泥、ばいじん等です。
5.処理業者の責務
廃棄物処理法は、産業廃棄物及び特別管理産業廃棄物の「収集運搬業」及び「処分業」(産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業)を許可制とし、他人の産業廃棄物等の処理を受託するには、当該業の許可を要することとしました。これらの産業廃棄物処理業者に課せられた廃棄物処理法上の主な責務は次の通りです。
処理基準の遵守
産業廃棄物処理基準及び特別管理産業廃棄物処理基準を遵守して処理しなければならない。
再委託の禁止
処理業者は受託した産業廃棄物及び特別管理産業廃棄物の処理を、原則として他人に委託(再委託)してはならない。ただし、再委託基準に適合する場合は再委託が可能となる。
名義貸し禁止
自己の名義をもって、他人に産業廃棄物及び特別管理産業廃棄物の収集運搬または処分を業として行わせてはならない。
マニフェストの回付・送付
事業者からマニフェストの交付を受けないで、産業廃棄物及び特別管理産業廃棄物の引渡しを受けてはならない。また、事業者から交付を受けたマニフェストについては、廃棄物処理法で定められた期間内に回付・送付するとともに、5年間保存しなければならない。
帳簿の備付け
産業廃棄物処理施設等を設置している事業者は、事業場ごとに帳簿を備え、保存しなければならない。また、帳簿は産業廃棄物及び特別管理産業廃棄物の種類ごとに、事業の区分委応じて必要な記載事項を所定の期限までに記載しなければならない。
処理困難通知の通知・保存
以下の事由により、委託を受けている産業廃棄物及び特別管理産業廃棄物の収集運搬、処分を適正に行うことが困難となったとき又は困難となる恐れがある場合は、その旨を10日以内に委託事業者に書面で通知するとともに、その書面の写しを5年間保存しなければならない。
また、委託を受けている産業廃棄物及び特別管理産業廃棄物の収集運搬、処分が終了していない場合に、事業の全部又は一部を廃止し、あるいは許可取り消しとなったときは、その旨を委託者に通知しなければならない。
<処理困難通知の主な事由>
① | 施設が破損等で使用することができず産業廃棄物の保管上限に達した |
② | 収集運搬又は処分の事業を廃止した |
③ | 処理施設を廃止した |
④ | 改善命令や事業停止等の行政処分を受けた |
6.産業廃棄物処理施設の設置許可
産業廃棄物処理施設を設置する事業者(排出事業者を含む)は、処理施設を設置する場所の都道府県知事又は政令市長の許可を受けなければなりません。
また、許可後の処理施設に変更が生じる場合には、その変更の内容に応じて「変更許可の申請」又は「軽微変更の届出」が必要です。 このうち「変更許可の申請」が必要になる事例としてはこれら等があります。
① | 処理能力が10%以上の増加となる変更 |
② | 処理施設の位置の変更 |
③ | 処理施設の処理方式の変更 |
さらに処理施設のうち、焼却施設、廃石綿等又は石綿含有産業廃棄物の溶融施設、PCB関連施設、最終処分場の各施設については、使用前検査及び定期検査を受けた日のうちいずれか遅い日から5年3ヶ月ごとに技術上の基準の適合状況についての定期検査が義務付けられています。
7.処理施設の設置者の責務
産業廃棄物処理施設の設置者には、廃棄物処理法により次の責務が定められています。
技術管理者の設置
技術管理者は、処理施設の維持管理に関する技術上の基準に違反しないように、処理施設の維持管理に従事する他の職員を監督する。
産業廃棄物処理責任者の設置
産業廃棄物処理施設を設置している事業場ごとに、当該事業場での産業廃棄物処理の業務を適切に行わせるため、産業廃棄物処理責任者を置かなければならない。なお中間処理業者は含まれない。
帳簿の備付けと保存
帳簿を備え、廃棄物処理法に定められた事項を記入し、1年ごとに閉鎖したうえ、事業場ごとに5年間保存しなければならない。
維持管理記録の作成と情報公開
産業廃棄物処理施設の維持管理に関し、産業廃棄物処理法に定められた事項を記録し、利害関係者の求めに応じて閲覧させなければならない。また、維持管理の計画や状況などの情報を公表すること。(手続き図の告示・縦覧の対象施設)
事故時の措置
産業廃棄物処理施設等の一定の施設(特定処理施設)の設置者は、破損その他の事故が発生し、生活環境保全上の支障が生じ、又は生じるおそれがあるときは直ちに応急措置を講じるとともに、速やかに自己の状況及び措置の概要を都道府県知事等に届けなければならない。
8.行政処分
都道府県知事及び政令市長が行う排出事業者および処理業者に対する行政処分というものがあります。 また、環境省は行政処分を行う時の指針として、地方公共団体の廃棄物行政担当者に対し「行政処分の指針について(通知)」(令和3年4月14日環循規発第2104141号)を発出しました。 行政処分には以下の種類があります。
報告の徴収
都道府県知事等は、廃棄物処理法の施行に必要な限度において排出事業者、産業廃棄物処理業者、産業廃棄物処理施設の設置者などに対し、廃棄物の保管、収集・運搬、処分、施設の構造・維持管理に関し必要な報告を求めることができる。「廃棄物である疑い」のあるものや、都道府県知事等の確認を受けて廃止された最終処分場に係る埋立地等の土地の形質を変更しようとする者等に対しても、報告の徴収を行える。
立入検査
都道府県知事等は、法律の施行に必要な限度において、その職員に、排出事業場、処理業者の事務所等、廃棄物処理施設の土地、建物に立ち入らせることができる。この場合、廃棄物の処理、施設の構造・維持管理について、帳簿書類、その他の物件を検査し、又は試験のために必要な限度において廃棄物を無償で収去させることができる。都道府県知事等の確認を受けて廃止された最終処分場に係る埋立地等の土地についても立入検査を行える。
改善命令
都道府県知事等は、期限を定めて、産業廃棄物の保管、収集・運搬又は処分の方法など必要な措置を行うよう命ずることができる。産業廃棄物処理基準や産業廃棄物保管基準に違反する保管、収集、運搬、処分がされた場合に出される。命令の対象は、産業廃棄物の許可業者に限られない。
措置命令
産業廃棄物の処理基準に適合しない産業廃棄物の処分(不法投棄等)が行われた場合、都道府県知事等は、生活環境の保全上支障が生じる、又は生じるおそれがあると認めるときは、次の者に対して期限を定め、その支障の除去等の措置を講ずるよう命ずることができる。
措置命令の主な対象者 |
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事業の停止・許可の取消し
産業廃棄物処理業者が廃棄物処理法で定めた基準に適合しなくなった場合には、都道府県知事等は許可の取消し又は事業の停止を命ずることができる。また、許可を取り消す場合として定める要件に産業廃棄物処理業者が該当した場合には、都道府県知事等はその許可を取り消さなければならない。
許可を取り消さなければならない場合 |
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許可を取り消すことができる場合 |
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事業の全部又は一部の停止を命ずることができる場合 |
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改善命令・使用停止命令
産業廃棄物処理施設が技術上の基準に適合していない場合は、その処理施設の設置者に改善命令や使用停止命令が出される。
- ア 都道府県知事等から許可を受けた産業廃棄物処理施設の構造またはその維持管理が法で規定する技術上の基準に適合していない場合
- イ 設置者の能力が省令で定める基準に適合していない場合
- ウ 設置者が違反行為をした場合、または他人に対して違反行為をすることを要求し、依頼し、唆し、他人が違反行為をすることを助けた場合
- エ 設置者が許可に対した条件に違反した場合
設置許可の取消し
産業廃棄物処理施設が技術上の基準に適合していない場合は、その処理施設の設置者に施設設置許可の取消しが出される。また、施設設置許可が取消しになると、その施設の使用ができなくなる。さらに、廃棄物処理法において欠格要件の対象者として規定される法人役員等が同様券に該当した場合も、設置許可取消処分の対象となる。
- ア 設置者が欠格要件に該当した場合
- イ 『処理施設の改善命令・使用停止命令』のウに該当し、情状が特に重い場合、または改善命令に従わない場合
- ウ 不正の手段により変更の許可を受けた場合
- エ 設置者が『処理施設の改善命令・使用停止命令』のア、イ、ウのいずれかに該当する場合、または特定産業廃棄物最終処分場の設置者が維持管理積立金の積立てをしていない場合
行政処分は処理業者だけではなく、ゴミを出した排出事業者の方が重大な処分が下される場合が多いです。
委託する処理業者が行政処分の対象になっていないか常に気を付ける必要がありますね。
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